それは、窓の外では小鳥が穏やかに歌い鳴くような、うららかな日のことだった。 「お兄様、本日は帰りが遅くなります」 「……うむ。今日は例のお茶会の日であるか」 その日の早朝、バッシュは、焼きたてのトーストにとろとろのチーズをたっぷり乗せ、ホットミルクと共に頂く、という至福の朝食をとっていた。 「……な、なるべく遅くならないように帰って来るのだぞ、リヒテン」 「はい、お兄様!」 一瞬、返事が遅れたのは、リヒテンシュタインの帰りが遅くなって、危険な目に遭うのではないか、と心配したからだった。だが、だからと言って、「帰りが危ないかもしれないからお茶会には出ないで欲しい」などと言う権限が自分にはないことも、バッシュは自覚していた。 それに、何より、怒りたくなかったのだ。 飼っているヤギたちに餌をやったり、お弁当を作ったり、忙しい朝ではあるが、学校に行く前のリヒテンとのささやかな団欒の出来る朝食の時間は、短い安らぎタイムなのである。そんな時間を、自分の我儘で理不尽な怒りで潰したくはない。 「ご心配ありがとうございます。でも大丈夫ですわ、お兄様。エリザさんと一緒に帰ってきますので」 「……わ、吾輩は別にそんなことを言いたいのでは……」 自分の考えていることなんぞ、お見通しだったらしい。 隣で同じ朝食をとりながらくすくすと笑う妹を見て、リヒテンにはかなわないな、とバッシュは思った。 (続く……) といった感じの、女の子オールキャラ(本当にオール)作品を載せていただきました。 ゆりゆりしい展開ではなく、どちらかと言えば普通の青春小説のようなお話です。 |