このところの国際情勢は、やれやれと呟きたくなる心境です。 安定したと思われたアメリカの経済状況も、再び佳境に入っているようですし……。 全く。アルフレッドさんたら勘弁して下さいよ。 まぁ、そこが彼の魅力でもあるんですが……兄代わりのアーサーさんにも、少し同情します。 さて。今日の夕飯はどうしましょうか。 インスタントにでもしましょうか。身体がもちそうにないものの、調理をする気にはなれそうにないのです。 ゲームの中みたいに、メイドさんが家に居たら良いのですが……。 と、小さいころのフェリシアーノくんのエプロン姿の写真を思い出して、ふるふると首を横に振りました。 彼の、ルートヴィッヒさんへの態度は秘かにネタにさせて頂いていますが、それでも彼のメイド姿は、私的には全く萌えません! 私だって国とはいえ男(そしてオタク)ですから、奉仕してくれる「女の子」のメイドさんは、一種のロマンであり……。 なんて考えながら、いつものように鍵を開けると、何故か部屋の明かりがついていました。―――消し忘れたんでしょうか? いいえ、消したはず。 不審に思いながらも靴を脱ごうとすると、可愛らしい声がどこからか聞こえます。 「おかえりなさいませ、菊様」 ふと目線を下にやると、その声の期待通りに可愛らしいメイド姿の美少女(←ここ重要!)が、三つ指立ててお出迎えしてくれていました。 長い黒髪の彼女は、大きな瞳を上目遣いにし、艶やかな唇を綻ばせます。 ……夢ですか? これ。 ならば一生醒めないで良いんですが。 「お疲れ様でございます。鞄、お持ち致しますね」 天使のような微笑みで言う彼女。はて、私の部屋に突然現れたこの方は……? 「一体、どなたでしょうか?」 「はっ、申し遅れました! 私、と申します。国連さんより、少しでも菊様のお役に立つように、と派遣されました。一生懸命尽力致しますので、どうか宜しくお願い致します」 再度深々と頭を下げるさん。 なるほど。国連さんも粋な計らいをしてくれますね。 「それでは、これからお世話になります。宜しくお願いしますね」 「はいっ!」 微笑むその可愛いらしさは、ディスプレイ向こうの私の嫁たちも負けるほどでした。 あぁ、どうして私は日本なのでしょう! イタリアとかフランスだったなら、思う存分にハグできたでしょうに! 菊のおバカさん! 「ところで菊様、お風呂にしますか? ご飯にしますか? それとも―――」 ktkr! ……と内心では叫びまくりです。すっかり気分はギャルゲーの主人公。オタクで良かった! 「それとも?」 「ひゃっ」 ならば、フラグ立てでも、とばかりに顔を近づけると、真っ赤になってしまいました。初で可愛らしい反応ですね。 「3つ目は何ですか?」 何とも気になりますね。まさか、ベタなアレでしょうか。 しかし、そんな不純な思惑が当たるはずもなく。 「マッサージです。私、得意なんですよ!」 と言われてしまいました。当然ですね。恐れ入ります、すみません。 しかし、さんももったいぶらないで言って下されば良いのに。思わず、よからぬ妄想が先走ってしまったじゃないですか。 それとも、身体の隅々までマッサージしてくれるんでしょうか。 むしろ私がさんにして差し上げたい……いえ、そろそろ自重しないと。 「もし宜しければ、今から致しましょうか?」 一瞬、うふんあはんなことをですか? と言いかけて、すぐさまマッサージのことだと気付きました。 あぁ発言を慎む国・日本で良かった……! 「是非、お願いします」 ―――マッサージは肩だけでした。 ……べ、別に残念なんて思ってないですよっ! とても気持ちが良いです、上手いものですね。 特に、ときどき力を入れるさんの吐息が耳にかかるのが最高に気持ちが良い。 まぁ、それは同時にまずくもあるんですが。 ちょ、さん! そんな声を耳元で出さないで下さい! と思ったのはこれで何回目でしょうか。 おまけに、柔らかいものがさっきから後頭部に当たっています……。 彼女はマッサージに熱中していて気付かないのでしょうが、その弾力が、 ―――すみません、もうダメです。お風呂場に退散させて頂きます。 とても気持ち良かったです、とさんに伝えると、純真な笑みを返されました。なんて罪な笑顔でしょうか。 はてさて。 お風呂から上がると、ちゃぶ台には夕食が用意されていました。 大根の味噌汁に、たくあん。色どり豊かな肉じゃが、そして紅鮭の塩焼き。ご飯は、白米が立っています。 味、メニューともに、文句の言いようがない完璧さでした。 アルフレッドさんのところのジャンクフードや、アーサーさんの作ったご飯とは比べるのもおこがましいですね。 また、その旨を伝えたときの彼女の喜びようといったら。 その笑顔もご馳走様です、としか言いようがありません。心のデジカメに永久保存させて致きました。 ―――という出来事があったのが、1週間前のこと。 「ただいま帰りました」 さんが家に来たときのことを反芻しながら、寄り道もせず、真っ直ぐ会議から帰宅すると、部屋がピカピカになっていました。 元々、そんなに散らかっていた訳でもありませんが、流石。やはりプロの掃除は違いますね。 居間には花が飾られており、ぽちくんも何処か嬉しそうです。 「お、おかえりなさいませ……」 ―――ただ、なんだかさんの様子が、どこかよそよそしいような気がしました。 目が合っては逸らされ、頬を赤くする。 ポジティブに考えれば、恋する乙女のようですが―――。 「どうかしましたか?」 「いえっ……! 何も見てはいませんよ! 本棚の、植物辞典のケースの中なんか見ておりません!」 植物辞典のケース……あぁ、思い当たる節がありました。 おそらく彼女は、掃除中に私が隠していた薄い普通じゃない本(しかも表紙の肌色含有率が半端ないやつ)を見つけてしまったんでしょう。 ……私も、精神は健全な日本男児(オタク的な意味で)ですからね。 とはいえ、彼女はああいったものを見るのは初めてなのでしょう。 だとすると、動揺するのも仕方のないことかもしれません。 なにはともあれ、件の本は早々に移動しなければなりませんね。 しかし、やはり少し気まずいものは気まずいです。 食事の間もいつもと違う空気が流れているように感じます。 「あのぅ……お聞きしたいことがあります」 気まずさを打ち破って先に口を開いたのは、さんでした。 わんっ、とさんの膝の上にいるぽちくんがお返事をしています。羨まし……じゃなくて。 「何でしょうか?」 「その、菊様はメイド服よりも、ナース服やチャイナ服、スーツや裸エプロンの方が、お好きなのですか?」 ……危うく番茶を吹くところでした。 「ど、どれらも同じぐらい好きですが」 って、私は一体何を言っているんですかね。 「そうなんですかぁ」 安心したように微笑むさん。 もしかして、私の趣向に合わせてくれようとしたのでしょうか。 ならば惜しいことをしましたね。ナース服やチャイナ服、スーツ姿もお目にかかりたかった……! 1番見たいのはもちろん、裸エプロンですが。 なんにせよ、さんに嫌われるようなことがなくて良かったです。 存在だけで私の精神を大いに癒してくれる彼女ですが、あまりの可愛いさに、悪戯心が湧いて来てしまうのもしばしばなので。 実際、現にさんに様々な格好(コスプレともいう)をさせるようと企んでいたのですが……。 さっきの反応から見るに、頼めばしてくれるのかもしれませんね。 どんなところまで「ご奉仕するにゃん♪」なのか、再確認する必要がありそうです。 まぁ、私の計画では、スク水を着て恥じらうさんの姿が拝めるのも、そう遠くはないと思われますがね。 じゃれあう夜 (これからも、たっぷりと可愛がらせてもらうことにしましょう。) 「ご主人様のお気に入り!」様へ提出作品! |