「ふぁ、あっ、ん……兄上……。っ、気持ち良い……です、か……?」



夜の帳の中で自ら足を開き、兄の上に跨り善がっているのは……彼の妹だった。





激しい戦いに負けた私たちは、アルフレッドさんによって、どこかの地下室に監禁されていた。
人の手では解けないくらい堅く椅子にぐるぐると縛り付けられ、猿轡までされている兄上とは対照的に、「ヒーローは、レディには優しいんだぞ!」と言われたために、私は何もされなかった。妙なところで紳士な人だ。





「あぁん、ふ、兄上ぇ……。はぁっ……」





精神的にも肉体的にも疲労困憊な兄に跨る。
薄汚れた布切れで口を塞がれ、椅子の背もたれに回すように両の手を拘束されている兄は、私に動揺の眼差しを向けるばかりだった。
兄が動けない代わり、私が懸命に腰を振る。
次第に、熱の塊りが私の膣内で膨張し始めた。





「んんっ……ふぅっ、んっ!」





兄がいやいやと首を振る度に、さらさらとした髪が私の肩口に触れた。
塞がれた唇から漏れる微かな喘ぎが、堪らなく可愛く思える。
豊かな睫毛を震わせてぎゅっと目を瞑り、快楽から火照った頬が、まるで紅でも乗せたような鮮やかさを見せていた。





「は、んぁ……良かった、です。……喜んで、もらえて……ひぁっ、」





今にも泣き出しそうな兄。
こちらを見る黒曜石のような瞳には、淫らに踊る自分が映し出されていた。
私と同じ、黒以外の色素の混じらない髪や瞳。誰よりも私に似ている存在。
つややかに光る髪と、力強い抵抗を訴える瞳が、何よりも美しい。
視界に映る兄はとても綺麗で、虜になってしまいそうだった。





「……んん!? ふっ、んんっ!」





私の締め付けに、下半身を震わせた兄の背中が海老反りになった。ぶるっと痙攣した後、私の胸に倒れ込む。
粘々した液体が、私の体内に溢れ出るくらい大量に降り注がれた。と同時に、力尽きたように意識を手放す兄。





「可愛い可愛い兄上様……。貴方は、絶対に私が守ります……」





耳元で出来るだけ優しく囁くと、兄は一筋の涙を流した。
水分で潤った瞳には光が宿り、より美しさを増す。





―――あぁ、何て美しいのかしら。

何かを失ってしまった私には、兄の涙を純粋にそう感じることしか出来なかった。





    密 室 症 候 群

(狂った戯れは終わらない)